難を逃れた民(ひとびと)に
生まれ育った国で迫害を受けたり、紛争により身に危険が及びそうだったり、政治に関する考えの違いで政権から命を狙われたり。
そうした状況により、母国にいられなくなった人々のコトを「難民」と言います。
日本に住んでいると「難民」という言葉は“聞いたことのある海外の問題”と片付けてしまいがち。しかし、ここ日本にも助けを求めてやってきた難民の人々が。
ただ・・・日本はその難民の人たちに親切ではないそうです。
日本にいる難民について教えてくださったのは、NPO法人名古屋難民支援室の羽田野真帆さん。
難民の方に寄り添い、主に入国管理局への難民認定という法的に日本への在留を認めてもらうための申請を手伝っている。
実はちょっと前まで、常駐して活動していたのは羽田野さん、ただ一人だけ。助成金も決して多くなかった。でも、この道を選ぶのに不安はなかったそうです。
もともと難民支援をやりたいって思っていた羽田野さん。
しかし「社会人経験2年以上、その分野に関わる経験を有する者」といった条件がどの組織でも求められ、当時の羽田野さんはまだ学生。
「“その経験は一体、どこで積むんだよ?”って思ってた時に立ち上げ時期のここの募集がありました。だから不安というよりも“ちょうどいいや!”って思っていました」
「今は新しくスタッフも入り、それまでは目の前のコトだけになっていたのですが、組織として将来を見て活動ができるようになってきました。活動内容も、難民申請中の人への支援だけでなく、申請が認められた人たちもやっと出てきたのでその人たちの自立にもフォーカスを当てて活動しています」
名古屋難民支援室ができる前にも、難民支援を手伝う支援者や弁護士の人たちがいたそうです。
でも名古屋入国管理局への申請者数が増えて組織的にやっていく必要を感じ、この団体が立ち上がったのだとか。
2018年時点、日本全体での難民申請者数は約19000人。うち20人のみが難民認定を受けられた。
難民申請の結果には3つのパターンある。“難民認定かつ在留許可”が一番良く、次に“難民としては不認定だけど人道的な配慮による在留特別許可”、最悪なのは“在留が認められずに強制送還か収容施設に入れられる”こと。
「申請中の人は自分でアパートを借りたりして日本に住んでいます。働く許可がある人は生活ができていますが、働く許可がもらえない人はかなり厳しい生活をしています」
「生活のこと以上に日本人と何が違うって、難民申請者は自分の将来が見えないところ。私たちにはそれが一番精神的負担になっているし、一番大変なことなんじゃないかなって」
認定には5年以上かかる。認定がされなければ母国に送り返される。難民申請者は、自分の将来がどうなるか分からないまま日本で何年も過ごす。
実際に送り返される人もいる。
「“働く目的で、難民に偽装して日本に来ている”って報道されることが多いんですけど、まず第一に難民の人でも働かなきゃ生きていけない。そして難民になった理由をうまく説明できない人も多くて」
あまりに迫害を受ける状況が当たり前の民族の人たちは、あえてそれを訴えなくて「なんで日本に来たんですか?」って聞かれて「働くため」と答えちゃう人もいるのだとか。
「強制送還になった場合、自力で送り返されるというか『飛行機のチケットをいついつまでに取って帰ってください』って」
―でもそのチケットも取れるかどうか…。
「そうです。金銭的な問題もあって、そういう場合ほんとにずっと入国管理局の収容施設に入れられっぱなしで。本来なら帰るまでの短期的な宿泊施設としてあるはずなんですけど」
「日本ではその収容施設に何年もいた人もいます。最長で5年以上いた人も。施設は施設外の病院に行く目的以外には外出ができず、病院に行く時も手錠を腰縄されていくんです」
日本の施設では刃物はおろか、ヒモ状のものを持ち込めない。対称的にイギリスの施設では、ジム、キッチンがあり、手芸用具や楽器もおいてあるのだとか。そしてキッチンにはもちろん包丁も置かれている。そして、難民の人と職員の人が面談する機会を定期的に設けている。
一方で仮に、申請が通ったとしても家族をすぐに呼び寄せられるとは限らない。
日本に来る多くの難民の人は、家族を母国に置いて逃げてくる。一緒に逃亡するのは危険ということもあり、逃亡先で安全を確保してから家族を呼び寄せる。
ただ、日本では申請に何年もかかり、更に家族を呼び寄せられるほど生活を安定させることにも時間がかかる。長い申請期間中に親が亡くなり、その死に目に会えなかったり。母国に置いてきた当時4歳・5歳の子が中学・高校生にまで成長していたり。
約20年ぶりに再会を果たした娘親子( 海外の事例 )
夫婦はソマリアの首都モガディシュからシリアに逃げ、その3年後に娘はドイツに逃れ、のちイギリスで難民認定を受けていた。(写真、UNHCR Refugees Media提供)
羽田野さんはこれまで、さまざま境遇にあってきた難民の人たちと多く接してきた。
その中で、こんなコトを感じているという。
「自分が大変な目にあっているのに、だからこそかもしれないですけど、困っている人への共感みたいなのをすごく持っていて。やっと認定されて働くことができるようになって、自分の生活だけを考えてやっていけばいいのに、自分と同じ出身国で困っている人に対して、病院に行く時に支援したり、中には手術をするときに保険がなかった人の保証人になってあげたりとか。あと、認定が全然なされないのは“自分の国のイメージが悪いんじゃないか”と考えて、自分たちでまちの清掃活動をし始めたり」
「やっぱり活動家だし、“社会のために自分はこうしたい”っていう思いがはっきりしていて、それを行動に移す人が多い。そこから学ぶことは多いし、私自身もこういう活動を続けるには熱い思いを持ち続けなきゃいけないんですけど、逆にそういう思いを難民の人からもらいます」
実際に、その活動が実を結んだ事例を紹介してくれた。
ミャンマーから逃れてきた難民の人たちの民主化運動だ。
「ミャンマー、ビルマの人たちは日本に来た後も、母国の民主化のための活動を続けていました。その民主化運動をしている当時、ミャンマーの軍事政権が変わるなんて思えなかったけど、そういう中でも諦めずに活動し続けたら、状況が変わってきて。そして本当に政権が変わりました」
「難民支援も全然認定がされなかったり、上手くいかないことが多かったりします。でも、“変わらないものだ”と思えるようなものでも“こうあるべきだ”という自分の意思に基づいて行動し続けていけば、いつか叶うこともあるんだっていうのを教えられたし、それがこうして難民支援に関わる中で見られたのはすごく貴重なことだと思う。難民自身から教えられることが多く、私自身もそういう風に生きていたいなって思うし、尊敬するし、そういうのを感じることができることも難民支援に関わっててよかったなって」
日本にいる難民の認知を広めることも大事な活動として取り組んでいる難民支援室より2つご案内
「ネパール料理を食べながら、難民の人の話をきいてみよう!」
【日時】2018年8月23日(木)10:00~15:30
【場所】愛知県豊川市のネパール料理店 ※名古屋駅太閤通口に集合し、貸し切りバスでの移動。
【対象】子供(主に小学生。中学生や高校生も歓迎。)小学生の参加は保護者の同伴をお願いします
参加無料、先着20名様(10名+保護者)
【申込方法】「参加者氏名・ふりがな、参加者の所属学校名・学年、保護者氏名、連絡先電話番号」をご記入の上、2018年8月16日までにE-MAIL(info@door-to-asylum.jp)かFAX(052-308-5073)でお申し込みください。
「第六回難民理解講座」
東海地域での難民支援を考える
名古屋難民支援室が行っている活動をご紹介しながら、難民の方がどのような支援を必要としているかお話します。東海地域で難民支援に携わりたいとお考えの方、難民支援に興味のある方、ぜひご参加ください。
【日時】2018年8月25日(土)13:00~15:00
【場所】名古屋難民支援室
〒460-0002 名古屋市中区丸の内2-1-30
丸の内オフィスフォーラム7階 川口法律事務所内
(地下鉄桜通線・鶴舞線 丸の内駅1番出口すぐ)
【定員】15名
【参加費】500円
【申込方法】メール(info@door-to-asylum.jp)で以下を記載しご連絡ください。
件名:難民理解講座申込
本文:お名前、ご所属
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