街の精肉店 @神戸
“神戸で肉を扱う”これが、この地域で最も“らしいこと”と語ってくれたのは、精肉店Nickの店主である錦昭光さん。
精肉店のNickを始めたのは、ただ“肉が好きだから”というだけではなかったみたい。
「学生の時、BMXという自転車の競技に力を注いでいて、会社で働き始めた当初もそのまま続けていきたかったけど、両立ができず、仕事をさぼりがちになってしまっていた。そうして、アルバイトとして働き始めたりもしたけど、仕事が続けなれなくなっていた」
「23歳の時に“独立したら働けるかも”と考えるようになり、周りに『なにか売るものはないか』と聞いて回っていた。服やクツなどもあった中、ホルモンも勧められた。いい意味で違和感(or引っかかり)を感じ、それを食べたらびっくりするくらいうまかった」
そして、当時持ち合わせていた20万円を握りしめ、Yahooショップで通販を開始したそう。
「最初は知り合いに買ってもらって、なんとか食いつないできた。そして、一年くらいして急にポツポツと売れ始めた。知らない間に、Yahooショッピングの特集で『舞の海さんのお勧めのおいしいものベスト3』に一位で選ばれてたみたいで。」
「それから、百貨店のバイヤーの方も訪ねてくれたりもした。当時、六畳一間の部屋で仕事をしていたところを訪問してくれてね」
そうして、錦さんの扱うホルモンは色々なところで買ってもらえるようになった。それから10年ほど経ち、おいしいホルモンを探す旅に出るようになる。
“おいしいホルモン探し”は自然と“おいしい牛探し”となり、その中で豚肉など他の肉のコトもいろいろと勉強していった。
精肉店Nickでは牛肉だけでなく、豚肉もこだわりを持って扱っている。
お店自体をオープンしたのは、まだ2年ほど前だそう。
「お店を持ちたいなって、もともと考えてた。肉屋が業界として、衰退していっているのを知っていて、そこに取り組みたかった」
そんな思いがあってか、お店のスタイルは他と少し違う。普通の精肉店にはないイートインスペースを設けている。この仕掛けは、“今まで肉屋に来たことない人も来てくれるんじゃないかな”と考えてのもの。
「一度来てくれたら、こういう専門店でモノを選ぶ楽しみを覚えてくれるんじゃないかなと思ったのです」
神戸が好きで、今のところは他県への出店を考えていないみたい。そして現在、神戸の中山手通の本店以外にも、新幹線の売店にお店を構えている。そこでは、肉のサンドイッチを売っているそう。
「神戸はパンの消費が一番の街で、肉の産地でもある。そこで、肉のサンドイッチを作った」
「神戸には独特の文化や街並みがあり、街自体には“神戸っぽさ”が存在する。そこに自分は、ものとしての“神戸っぽさ”を追求していった。特に、新神戸駅には“神戸のおみやげ”として神戸を背負っていけるものが、パッとは思い浮かばない。だから『名物を作りたい』と思って、作った」
―食べて、うかがって
率直に、おいしい。ローストビーフは“肉のそのものの旨さ”が分かります。肉のキメが細かいのか、食感は柔らかかったです。ぜひ、ご賞味あれ~
錦さんは、独立したら働けるようになった理由をこう話されていました。
「意識やろね。たぶん会社で働いてた時、見えない部分があって、全体像が分からない。目的が見えない。お金を稼ぐためでしかなかった。」
独立してすぐの頃は、良い時も悪い時もダイレクトな結果が気持ちよかったそう。
今はそこに“街のため”とであったり、夢や目標をもって成長していくことを意識しているそう。
どの位置にいるかで、何を追い求めるかって違うんだなって思ったり。
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