岐阜県民による、岐阜県民のための仕立て屋
歴史ある岐阜柳ケ瀬商店街。その一角に、できて一年半の新しいオーダースーツの仕立て屋さんがある。
今回、取材したのはそこのオーナー、水野琢朗さん。
服は昔から好きだったそう。でも、背が158cmと小さい割に、ガタイがよかったため、合う服があまりなかったそう。
そんな中、社会人時代にオーダースーツを試したときに「こんなにサイズが合うことはすばらしいことなのか」と感動したことが、今のお店のはじまりみたいです。
だからか、お客さんとしていらっしゃる方には、背やガタイなどで既製服が合わないと体型に悩みを抱えている方も多いみたい。
お話を伺った水野さん、ご出身は岐阜県の多治見市。高校を卒業後は、大学・社会人生活の中で、横浜、岡山、四国など、全国を転々としていた。
そうして、多くの街を見る中で、地元岐阜の魅力を認識し、自分の地元を盛り上げたいと岐阜に戻ってきた。
いわゆる“地元でまちづくりを盛り上げたい”と思った時に、同じ思いを持っている人たちは増えているとは感じていたよう。
でも、多くは役所や地元銀行、NPO、コンサルなどのサポートをしてくれる人たち。プレイヤーとして、地元に根付いた事業者が不足しているように感じていたそう。
そこで、「そういった人が不足しているならば」と、自分が事業者としてオーダースーツ店を開業されたそう。
周囲からは「開業なんて」と反対もあったみたい。しかし、あまのじゃくな性格からなのか、ずっと自信を持ちづけていたみたいです。
–出身は多治見のはず、なぜここ、岐阜市でオープンされたのですか?
「多治見でも、いずれお店を出したいとは思っています。多治見にこそ、仕立屋がない状態ですので」
「でも、多治見は人口が少ない。オーダースーツ業界は人口30万人が開業の目安だと言われている。一方、多治見市の人口は10万人ほど。一筋縄ではいかないと思っています。」
「ですが、あえてやってみたいと思ってしまうのが私です。だから、ある程度の人口のある、ここ岐阜市で実力をつけてから、多治見でもやっていきたい」
そんな思いがあってか、東京や海外への進出は全く考えていないそう。
「最終的なゴールは、オーダースーツ以外にもいくつかブランドを手がけ、そのブランドを同じ通りに並べ、ショッピングモールの代わりになるような場所をこの通りに作りたい」
こういった思いには、まちづくりに対して、水野さんなりのお考えがあってのコトみたいです。
「まちづくりに関して、行政側からのお話を聞いていて『そうじゃない』と感じる部分に“企業を誘致する”っていう考え。外から来た企業は環境が変われば、撤退していく。でも、そうじゃなくて、“そのまちの人が、そのまちのために、そのまちで起業する”すると、定着する。残っていくと思う」
ただ、その考えには逆の見方もあると思う。倒産のリスクがあること。成功するとは限らないということ。
もちろん、水野さんにもそのリスクはあったと思う。そんな中、さつきテーラーをやってこれたポイントとして、若いことをあげていた。
岐阜市の仕立屋を営む方の中で、水野さんの28歳という年齢はとても若いそう。
「“若い個人店”と言えば、それだけで大きな差別化になります。ほかの仕立屋さんは自分の父親くらいの年齢の方々がやられていたりするか、大手量販店の一角にオーダーコーナーがあるくらいです」
「仕立屋の世界は美容師の世界に似ています。カットする人(仕立てる人)のセンスが合うかどうか、会話が弾むかどうかが非常に重要です」
「今の現代風のセンスを求める方は、やはり若いお店に来てくれます。そして、“話しやすい”ということで、当店を選んでくれます」
写真:これはコーディネートのサンプル、きれいな見せ方、撮り方を自身で考え、行き着いたものだそう。
このようなご自身の経験があってか、こんなことも話してくれました。
「同業者が高齢化し、ある程度衰退気味と言われる業界こそチャンスがあるのではないかと思っています」
―お話をうかがって―
ただ、服が好きで「将来、自分でお店を持ちたい」と思う方もいる。
今回、取材した水野さんも服は好き。でも、それだけじゃない。
自分の地域に何か貢献したいという思いを持っていて、目標がある。
たぶん、同じ事業をやるにしても、事業を起こすきっかけが違えば、目指すものも違うんだろうなって思ったり。
SATSUKI TAILOR(サツキテーラー)のホームページ
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